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第18回・本当に同じ局で作ってるの?

この「戦国メディア市」では、なんか若輩者の私ごときにコテンパンにしてやられている「NHK大河ドラマ」(別段NHKが私ごときを相手にしている訳でもないが)。しかし、NHKは広い。NHKのどこだかの部署にもある事情でお邪魔させていただいたこともある(ねっ、安福君)私のことだし、NHKの社員食堂で食券を神隠しにあってしまわせたこともあることだし???(すみませんでした、先輩)というわけで、今回は「歴史発見」「ライバル日本史」というとってぇも良かったNHKが誇る歴史番組の後を継いだ「堂々日本史」をとりあげよう。

ごく普通の歴史、とでも申しましょうか(爆!)、この番組が始まった当初は「教科書などでごく当たり前に学んだ歴史の事件・出来事に対して、より深く突っ込む」とかなんとか、そういうスタンスで始まったんだったと記憶しているが。とりあえず、内容的にはやはりNHKのドキュメントだなあ、こういうのこそが、「教養番組」なんだなあと思わせる、歴史通の方にも歴史初心者の方にも満足いく内容だ。ここでは、戦国時代の回に限定して紹介させていただくが、たとえば、資料がふんだんにある関ケ原合戦なんかの回では再現ドラマを使って、徹底的にぐっと深くまで差し込んだ内容構成となっている。徹底的に史実と向き合って歴史をくっきりと我々に見せ付けてくれる。すごいじゃありませんか。

それに、今まで通説として用いられてきた説を実験を持って嘘と証明してくれる番組でもある。長篠合戦の「鉄砲三段打ち」 これを「声は戦場すべてに届くことは到底不可能」ということを実際に設楽が原古戦場で実験してくれたり、馬が新田を走りぬけていくことが不可能であることを証明してみせたりと、いたってまじめな実験をしてくれている。まあ、バラエティ要素が強かった「お笑い風林火山」ほど、人間にとってハードな、人間を使い捨てにするような実験はしないが、それでも、関ヶ原合戦の東西両軍の行軍疲労を実際に歩いて計測したりと、科学的でもある。

ゲストの方のコメントも聞いていて飽きない。学者系の人や、小説家系の人、役者系の人と様々な人が様々なコメントをする。それに、アナウンサーが導入部に扇子を叩き「時は~~年、・・・」と講談風に叫んで盛り上がっている。こんな面白い番組はない。某人物系番組と違ってあからさまな嘘はない。

いや・・・大河ドラマも少しは見習って・・・・あああ、やっぱり言っちゃった。一応、「毛利元就」ではストロベリートークにしたんだけどなあ。まあ、いいか。あっちはドラマだからしょうがないのでしょう。



やっぱり、湯浅譲二の音楽は凄すぎて理解に苦しむ筆者


DATA:NHK、堂々日本史
(初出:「戦国メディア市・第18回」1998.2.7)


第17回・理由はともかくとして

歴史小説・・・を読み続けてはきたが、氏の作品と出会ったのは結構遅く、もう通産で、9000ページは読んでいた頃だ。山岡荘八歴史文庫に生き、吉川英治、海音寺潮五郎、早乙女貢にも手を出していた。そのあと、ふと「国盗り物語」を買ってみた。これが、氏との出会いであった。

電車の中で読み始める。最初は「はずしたか」と思った。話についていけない、わからない、状況が空想できない、つまらない。しかし、あるシーンを境に一気に本に溺れてしまった。そのシーンは、本の50ページ目だった。主人公が暗闇に聳え立つ人影が、児小姓か女かを確かめるために、「念のために」股間に手を差し入れる、というシーンだった。当時まだ13才だった「ボク」には、ちとインパクトが強すぎた。海音寺潮五郎「加藤清正」、早乙女貢「明智光秀」は、お二人の作品中では比較的おとなし目だったからだ。それ以降、悲しいかな、まさしく氏の術中だった。

ここらで氏の名前と今回戦国メディア市に取り上げる作品の名を明かそう。氏の名前は、「司馬遼太郎」 超メジャーにして、戦後の歴史小説の第一人者、その上作者が一番読んでいるのではないか、という方にもかかわらず、なぜかメディア市には未登場だった方だ。取り上げる作品は氏の作品中でも特に名作の誉れ高い「国盗り物語」

この作品はもともとは斎藤道三だけを書くために題も「国盗り物語」とされたそうだが、編集部の意向によってもっと続く事になり、道三の弟子とも言える信長と光秀の二人を主人公にした(編注:名目的に主人公は織田信長一人だが、実質的な意味合いや小説自体の書かれ方も考え見て、あえてこのように書く)後編も出来たのであった。

前編は前編でまさしく、「国盗り」のプロセスが面白い。人間模様がやはり、他の作家達とは違ったか書かれ方がなされており、とっても斬新だった。そして、小説の醍醐味とも言える「主人公の反則なまでの強さ」もある。誰だか、氏が亡くなられた時、「司馬遼太郎作品に批判的な」評論家なるものが、「司馬作品は日本人が格好良く、甘く描かれているので、読者にとっては、気持ちいいのだろう」などというコメントが載っていたような覚えがあるが、そうじゃないと小説でない気がする。当時は「何こいつ言ってやがんだ」とかと思ったものだが、うーん、批評って難しいな。

前編では主人公の神出鬼没ぶりも見物ですな。突如、京の残してきた妻の元へ行ったり、土岐頼芸をわざわざ船で送ったり、とまさしく、小説らしい書き方ではないか。

後編では、「鬼と人と」が如く、織田信長と明智光秀の人間がテーマになる、と思っているのは私だけであろうか。それぞれのビジョンの違い、そして光秀が最初から大名でない事による信長への思い、信長に対する優越感が崩れた時・・・そこらは「フツーの」歴史としてじっくり見るとまさしく一大物語だ。そして、信長のダイナミズムも忘れてはいけない。織田信長はやっぱりカッコ良い。男だ。そして、道三・信長・光秀三人ともが戦国の世に相克の果て倒れる。その終劇も細川藤孝を登場させうまくあしらい、無事小説は終わる。すごい。

その後私は続けて読んでしまいましたよ、司馬ワールド。「関ケ原」「城塞」と。いやー、面白い面白い。これまでいくつか読んできて、やはり司馬さんの作品は極めてスタンダードな面白さがある。山岡荘八作品は人物にくせがある(そこが面白いのだが)、海音寺潮五郎は「坦々」という感じだ(それはそれがいい)。なんだかんだいって、司馬さんの小説は結局いつまでも読んでいるんだよね。

しかし、晩年は歴史小説を書かれなくなった事、そして氏の死により、私がまだ読んでいない司馬さんの戦国作品はもう「夏草の賦」くらいになってしまった。残念。

司馬遼太郎の小説の御蔭で幕末へも流れ込みつつある筆者

DATA:新潮文庫、国盗り物語
(初出:「戦国メディア市・第17回」1998.1.24)


第16回・ドラマのうちをくらぶれば

今年の戦国時代劇は12時間ドラマのみだった。テレビ東京の12時間ドラマをはじめ、今まで私が見てきたものをすべてピックアップし、紹介していこう、というスペシャル企画な訳です。土曜日更新になったことだしな。

  • 1998年12時間ドラマ「家康が最も恐れた男・真田幸村」
        結構全部見るには体力が続きませんでした。とほほ。でも、まず真田幸村その他の人物がみんな歳取りすぎだと思う。松方広樹はイメージ違うという声や真田信繁(幸村)と淀君にはびっくりした、という声がとある掲示板に書かれておりました。
        まあ、大河とかその当たりと同様割り切ってみてみると面白いと思うんだよね、それなりに。ドラマだからね、一応。合戦シーンは本当にそれっぽい。騎馬突撃だけでもないし、雑兵の格好はみすぼらしい。ちゃんとしている。
        ただ、上田城が彦根城とかその他いろいろ。ということと、本多忠勝が異常に長く生きている、服部半蔵不死説を取っている、真田信之が大坂の陣に来ている上真田信幸のままだ、真田大助の生まれる時期が違う、一部の真田十勇士が大坂夏の陣の前に死んでしまう(今モデルの人物と違う人物の設定なのかしら)、もうその他いろいろ細かくてどうでもいいことかもしれないことがキチンとなっておらん、喝!
        霧隠才蔵女性説とかはいいと思うし、柳生との暗闘とかを描くのもいいと思う。ただね、柳生兵庫助は小田原の陣のとき12歳ですぞ。なのにあれは・・・
      あといえば猿飛佐助が甲賀者というのはいいのだが、その甲賀者の頭の名前が「サンダユウ」?三太夫ではあるまいなあ!
  • 1996年12時間ドラマ「豊臣秀吉 天下を獲る」
      うーむ。上で書いたことのルーツのような気がする。合戦シーンとか派手なのに史実をメタくそに用もなく歪められている。足利義昭を金ヶ崎から退いた直後に追放しているんだから凄まじい。うーむなあ。12時間では限界があるのだろうか。
  • 1995年12時間ドラマ「織田信長」
      この頃はさすがに12時間ぶっ続けで見るだけの知識ありませんでした。長篠合戦の鳥居強右衛門がカッコよかったかな、と。原作の山岡荘八の小説に非常に沿っているのでよかった。
  • NHK大河ドラマ「武田信玄」
      この頃は戦国時代の武将名くらいしか知りませんでした。そう、それ程に私は若いのだ。私が住んでいる座まで知名度が高いのは織田信長でなく武田信玄でした。だから、オープニングの流れ落ちるようなのを薄っすら覚えている、だけです。この間その時のオープニングテーマを聞いてああ、こんなだったな、と思った。それくらいあの音楽は幼き私にインパクトがあったということですか。ちなみにこの作品の前の「独眼龍政宗」やこの次の「春日局」は一切覚えておりません。
  • NHK大河ドラマ「信長」
      この頃になると毎回見れるだけの余地は出来ていた・・・とは思うのだが、実際に見て覚えているのは「桶狭間の合戦」と「本能寺の変」くらいです、もう。もちろん最後の「ソレデハミナサン、アテブレーベ、オブリガード」はよ~く覚えていますがね。クラスで流行ってたなあ。
  • NHK大河ドラマ「琉球の風」
      この作品はよくない、という人も大勢いらっしゃるようですが結構私は好きですよ。この作品からは全部見るようになりました。いやね、けっこうなんか違うツボついてて面白いのよね。
  • 1995年TBSドラマ「愛と野望の独眼龍・伊達政宗」
      タイトル違ってたらごめんなさい。とにかく、山岡荘八原作のこの作品。最初は原作通りそのままなのだが、後半に原作通りにやっていく余裕がなくなって違う方向に持っていくのはTBSならでは。騎馬鉄砲隊がいい味出してたと思う。
  • かなり昔のTBSドラマ「関ケ原」
      再放送をちらっと見ただけです。原作よりは映像化されたために面白い、とは思わなくなってしまい途中で見るのを打ち切ってしまいました。そうしたら次の日も続いてて「こんな長いのいつ作ってたんだ」とびっくりさせられました。
  • 1995年テレビ朝日ドラマ「影武者・織田信長」
      主演の方がど~考えても織田信長のイメージではない、と思いましたが結構意欲作だったと思います。羽柴秀吉本能寺の変黒幕説も織り込んでいて、当時の新聞には「影武者を題材にしたものは多いが、織田信長を影武者としたものは珍しい」と書かれてたっけ。
  • 1997年テレビ朝日ドラマ「司馬遼太郎の功名が辻」
      この戦国メディア市でも紹介しようと思っていたのだが間に合わなかった。そこそこよかったのだが、いかんせん原作を「ベストセラー小説」と題しているので原作の良さをそのまま行かすのかな、と思いきや原作離れしている。あーあ。合戦シーンで山内一豊がいるところが非常に淋しい、とか。キャストをけちってて織田信長が出てこない、とか。それに、一豊土佐入国後が書かれず「土佐一国二十二万石」と派手にテロップが出て終わり、というのも(その時の石高違ってたらごめん)。彼の政策が明治維新を生むこととなったのだから、キチンと描いて欲しかった。
  • タイトル放送時期不明のテレビ朝日ドラマ
        あの木村拓哉がなんとあろうことか、タヌキ且つ肥満体の若き日の徳川家康(松平元康)をやっていたことがあるのですよ~。しかもストーリーがぶっ飛んでいる。桶狭間合戦のときの丸根砦攻略中、突如現在にタイムスリップしてしまう。そこで見た交際中のカップルの女性に恋してしまう・・・・・すごい、すごい、すごすぎる展開だ。このドラマについてよく知っておられる方は

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      して下され。

    というわけで、ドラマの特集でした。いやあ、いろいろあったんだなあ。すっごくよかった、最高!というのはなかったけど。昔はあったのかな? 私はまだまだ青いというところか。

    12時間ドラマは12時間耐久ドラマであることを知った筆者

(初出:「戦国メディア市・第16回」1998.1.3)