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第9回・作者が、見知らぬ海へ

というわけで、2回続けて小説を取り上げてしまうわけである。もっと言えば、次回も小説を取り上げる予定なので3回続けて、と言う事になる。まあよい。今回は、隆慶作品を取り上げてしまうわけだ。

隆慶――正しくは隆慶一郎。この日との小説に感銘を受けた人は親しみを込めてこう呼ぶ。それで、今回取り上げる作品は「見知らぬ海へ」 この人の代表的作品と言えば、「影武者徳川家康」や、書店で「売れてます」とよく出た「捨て童子・松平忠輝」 し・か・し私が最初に読んだのは「時代小説の愉しみ」だったりする。これは、エッセイ集と言った方がいいかもしれない。織田信長、武田信玄、北条氏康や明智光秀に対する独特の考えが刺激的だった。それに、他の文章もものすごく面白くて、私としては珍しく、2回一度に読み終わるまで肌身はなさなかった(いつもは1回読み終わると2回目以降は家で読んでいる)。

次に「影武者徳川家康」を読んだのだが、これまたぶっ飛んだ。この本の読後、徳川秀忠に対する見方がかなり広くなってしまい「読んだ事を後悔した」と思ったくらい影響力ある作品だった。これら2作品は、またじっくりと触れる事があるかもしれない。

その次に読んだのが「見知らぬ海へ」だった。私としては初めての隆慶未完小説であった。隆慶一郎氏は急死であったため、多くの未完小説が存在する。が、この本の読後以降向井正綱がものすごく好きになった、というよりもこれを読むまでは向井正綱など知らなかった。父と義兄が釣りをしている間に居城で玉砕。「魚釣り侍」と罵られつつも向井水軍を徳川水軍の中核としていく様、小田原の陣の際の活躍などがダイナミックに書かれているのだ。おそらく、水軍武将を書いた小説では、これの右に出るものはないだろう。

ついでに書けば、この次に読んだ「死ぬ事と見つけたり」はさらに面白いのに未完で「俺の寿命を10年差し上げてもいいから続きを書いて欲しかった」と思わせたのだが・・・・・・これはまた後日改めてゆっくりと。

次回は10回記念をやる?筆者

DATA:講談社文庫、見知らぬ海へ

(初出:「戦国メディア市・第9回」1997.9.28)


第8回・織田信長小説のスタンダード

織田信長を題材にした小説というのは意外に少ない。前にも紹介した「鬼と人と」でも作者の堺屋氏は

『織田信長を題材にするのは長年の夢であったが、かつ、重い夢であった。「日本史の奇観」であるこの改革者の苦労を描くことだからだ。』(要約引用)

とまず最初に書いている。だからであろう。

私が最初に読んだ時代小説は井上靖の「風林火山」であったが、その次に読んだこの山岡荘八「織田信長」の方が最初に読んだ歴史小説、と思えるほど私にとっては印象深かった。

山岡荘八作品は人物にクセがある。そこがたまらない。独特の口調が人物の感じ、悲壮感、達成感、絶望感・・・等をうまくこっちに伝えてきてくれるのである。最も、この作品で一ヶ所だけわからりずらい場面があったが、歴史小説では少ない方だろう。その他の場面はいたっていい雰囲気なのである。読み進めやすいことがまたいい。資料の引用なども最小限である。5巻が長編とは思えないくらいテンポは速いのである。しかし、テンポが速いとはいえ、内容は濃い。私は何回か読み返している。

この作品はその後の私の史観に大きな影響を与えている。それくらいインパクトは強かった。それはいいことだったのではあるが、後々考えれば発表時期が少し早めだったので間違えているところも多く、後でちょこっと苦労した。とはいえそれを補うに十分な魅力がこの小説にはある。

織田信長小説はいくつか読んだが、「鬼と人と」を除いた一般名形式の物ではこれが1番良かった。「歴史小説を読んでみたいけどどれがいいかな?」と人に聞かれたら「まずこれがいいんじゃないか」と人に勧めるであろう。

短い文章すみません、とついでに言いたい筆者

DATA:講談社山岡荘八歴史文庫、織田信長

(初出:「戦国メディア市・第8回」1997.9.17)


第7回・また一歩、理想へ近づいていた~後編

ええと、今回はパワーアップキットについて触れたいと思います。8月1日に発売され、毎年のことではありますが、光栄に余計に金を払うこととなり、めでたしめでたしなのですが、なんとなく「天翔記」の時よりパワーアップしてないなあ、と思わざるを得ません。確かに「年表」機能はちょっと嬉しいけど、新武将作成や武将の改名なんかも出来ない、というのはねえ。それにすばらしいバグもありました。将星録本体の時は「九戸政実の顔が松前慶広と同じ」というのがありましたが、今回はさらに致命的。「シナリオ8の(新時代の到来)で松永久秀が大名なのに、『部将』の身分になっており、部将と同じ兵数しかもてない」松永久秀で暴れまわる、ということは出来ないのでしょうか。

とはいえ、大砲の数まで変えられる「城エディタ」の再登載は嬉しい。これで、弱小で城に篭もって遊ぶ、という事も出来るってもんだ。

まあ、私の「将星録」小話を最後に。とりあえず発売日に買った私はシナリオ2の織田で早速始めた。まあ、最初に内政にはまったものの、順調に勢力を拡大。それでも、天下統一は1590年代になってしまった。しかも、統一は7月。まあ、長宗我部でやったりしていた影響もあるのだけども。今はシナリオ5の伊達家でやっている最中である。例の拉致事件で伊達輝宗が死んだのが少し痛い。考えてみれば「イベントを起こさない」にしておけば良かったんだなあ、と思ったがもう後のお祭りである。本当に将星録は「やりたい、と中毒して思うことは少ないが、一度始めると時間を忘れるゲーム」である。

ところで・・・マシンの能力がたらんと重いんだよなあ。それにマッキントッシュでも640×480で出来ない、という問題も指摘されているしなあ。後、武田信玄は反則だと思う。まあ、足利義輝の「斬鉄剣」なんかの遊び要素が多いのも魅力だな。それと例の伝統イベントの彼が死なずに「わしが再び必要になるまで比叡山に登る」って何かなあ。分からん。あと、このゲームのオープニングは最高だね。エンディングの最後は受けたけど。

なんだかんだいって、ここに書いていて悪いことを一つも思い出せないのだ。今から次のが楽しみだ。

更新の後れ申し訳ない、と思う筆者

DATA:光栄、信長の野望・将星録

(初出:「戦国メディア市・第7回」1997.8.24)