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第6回・また一歩、理想へ近づいていた~前編

去年の11月になっても新作の声が聞かれずどうしたものか、と思っていた信長の野望シリーズ。年末になりやっとリリースの情報が伝わってきた。しかし発売は96年春、と聞き少し残念に思ったのも今は昔。発売日に買ったのに(その時の様子は姉妹ページの町田PC MAPに少し書きました)天下統一したのは7月中旬。まあ、ゆっくりプレーできなかったからだけど・・・ というわけで、今回のメディア市は「信長の野望・将星録」です。

なんだかんだいって爆発的売れ行きを示したこのソフト・・・しかしよく見ると粗が目立つのでここでズタズタにけなしたろ!とも思いましたが、あまりにも「辛口な批評」で有名になりつつあるので、あえてここでは将星録の良さを広めていこう、と思うのである。

まず、最初に内政にはまった。というか、私は「理想の戦国ゲーム」を暇さえあれば考えているが、「内政と戦闘を一つの画面で」という発想は3年前から持っていた。それが今回実現したわけですな。とにかく、美しく城下町を作った。水田はレベル3、街もレベル3。こだわって作った。これが後で、天下統一遅延理由になるとは思いもよらなかった。とにかく美しくなった城下町を眺めうっとりする。緑のバーを見てうっとりするのとはわけが違う。

次、戦闘がいい。個人的には覇王伝の戦闘が好きだけど、今回のもよい。最初は本陣に弓で間接攻撃されて退却、ということに憤りを感じたが、こっちで決まると気分がよい。攻城戦も、最初は「何だこれ。15ターンで落とせるわけないだろ(私はシナリオ2の織田家でプレーしたため最初に攻撃したのは稲葉山城だった)。つまんね~」と思っていたが、次第に「手応え」を感じるようになっていった。

なんだかんだいってより史実に近づいた、のではないか。私の周りにいる「天翔記」からのユーザーは会見―奨励で忠誠が上げれないことに不満を持ったようだが。

「将星録」をプレーして感じたのは「天下統一」よりも内政で遊んだ方が面白いのではないか、ということである。前述の彼は天下統一を何回もしたそうだが、私は違う。極めて穴熊的戦略で遊ぶ。四国長宗我部帝国を作ったり、関東里見共和国(←なぜ北条でないかは不明)して遊んだ方が面白い。利根川・荒川をすべて治水し農業国家を作ったりさ、安土城に明智でこもったり。大体、天下統一をしたのは、豊臣秀吉と徳川家康の2名だけなんだから。出来なくて当然じゃないか。もっとも、天下を統一できなかった大名に天下を統一させるのが正しい遊び方なのではあろうが。

と長くなったのでまた次回。今度はパワーアップキットについても触れることとしよう。

手抜きだ、と思われたくはない筆者

DATA:光栄、信長の野望・将星録

(初出:「戦国メディア市・第6回」1997.8.10)


第5回・歴史もここまでお笑いに出来た

ある木曜日、新聞のテレビ欄を見ていたらなんか新番組が。「突撃!お笑い風林火山」がその名前である。第1回がなんだったか忘れてしまったのだが(でも戦国時代の何か)、バライティー番組として非常に面白いのである。そもそも、歴史ネタの番組というのは今まで、「見ていて眠ることが出来る」という感じがあった。自分がどんなにその話題に興味を持っていても眠れてしまう。しかし、この番組はそんなことはない。7時からの番組というせいもあるのだろうが。

確かにところどころ「えっ」と思うことはある。しかし、歴史好きという人は意外に少ないものである。歴史嫌いの人の多くの原因は「年号覚え」である。これに苦痛を感じない人もいるのだが、多くの人はこれがむかついてたまらない。私も戦国史の年号はそれなりに覚えてはいるが、思い出せない時もある。日本古代史や世界史なんぞはほとんど覚えていない。多くの歴史好き、少なくとも戦国時代愛好家の人々が好きなのが「エピソード」である。その人の明暗をあらわすエピソード、それがたまらなく好きでいくつも覚えている。大体こういう人は小説や時代劇から入った人である。私はこういう人を「第2種型歴史(戦国)愛好家」と定義したい。ま、中には年号どころかその事件の日付まで覚え、各種古文書を捜しまわり、「何とかの研究」という黄色のカバーに入った赤か青の硬い本を読んで楽しんでいる人もいる。「第1種型歴史(戦国)愛好家」と私は定義したい。このような人の一部が学者・史家となり、そのまたごく一部がとてもすばらしすぎて一般ピープルどころか普通の歴史マニアにも読むことが不可能な研究書を出すのである。

話しが横にそれた上に、「完全戦国年表には日付まで書いてあるじゃないか」という突っ込みを受けそうなので止めとするが、とにかくこの番組はぜんぜん違う。本当に純粋バライティーとして十分面白いのである。この番組の一番の目玉は「歴史再現」だと思う。これは今までどこの番組でもやっていなかった画期的なものである(時々某番組でやっていたかな?)。剣の変わりの棒も血のり?がついてわかりやすいし、芸人が奮闘しているところも笑える(ちょっと失礼)。ゲストも、「分かってるレベル」「分かってないレベル」の2種用意される。分かってるレベルの人(時代劇出演者が多い)の考察も面白い。最初に提示される仮定も、わかりやすく斬新(例:川中島合戦は紅白歌合戦だった)「一理ある」と思わせてしまうところが憎い。「風林ニュース」も、時代によって髪形が変わっている、というような細かさも大変よい。ただ、最後のインタビューは少し・・・まあ、しょうがないのだろうか。

読売新聞の放送塔なんかでも受けはいいらしい。歴史番組としてバライティーとして、中庸が取れていてそれなりによいので、まだの人は一度ご覧になってみれば。

「信長の野望・将星録」は少し待っていてください、といいたい筆者

DATA:フジテレビ、突撃!お笑い風林火山
(初出:「戦国メディア市・第5回」1997.6.22)


第4回・面白いものは面白い

前回、次回は「将星録」と書いた覚えがあるが無視。張り切って今回の戦国メディア市いってみよー。

堺屋太一氏といえば「大河ドラマ・秀吉」の原作で知られているが、わたしは、「鬼と人と」を薦めたいと思う。

「鬼と人と」は「豊臣秀長~ある補佐役の生涯~」「秀吉」とともに大河ドラマの原作になった作品である。しかし、堺屋さんの名前は「過激演出」かつ「史実誇張」の悪名高き96年度大河ドラマで泥を塗られた。某週刊誌にも載っていたように、作者本人もびっくり、だったのである。

私がこれを読んだのは大河ドラマが始まるまえで、「豊臣秀長」のあとであった。ぶっ飛んだ。くそがつくほど面白い。堺屋さんといえば、もともとは経済、通商産業方面の人で、歴史を現在の日本のために役立てようとしている感がある。「豊臣秀長」やその後に読んだ「巨いなる企て」でも、現在の会社組織に例えられる文章が出てきて、わかりやすい。好みの別れる文章かもしれないが私は好きである。

しかし、「鬼と人と」は違う。まず文書形態から行って違う。独白形式なのである。作者は織田信長を書きたかった。しかし、「日本史の奇観」「日本史の例外ともいうべき事件の一方の主役」「主観性の強い天才」である信長は、筆者の手によって書くことは憧れではあった。しかし、それを実行するために長い間迷い続けた、ということが序文に書かれている。もっともなことだと思う。それでたどり着いたのが、時代の改革者である信長と、時代に忠実な明智光秀、それぞれの口を借りた“独白形式”だったのである。

光秀が織田家に仕えて数年も経ったある年、光秀は信長と生活をそれなりの期間ともにせねばならなくなった。天正10年の武田攻めのことである。同じ出来事を二人それぞれの立場で書いていて面白いのだ。筆者はエンターテイメント性を重視して書いたつもりはないのかもしれないが、小説としてのエンターテイメント性は極めて高いものがある。私は今まで50作品弱歴史小説を読んでいるが、そのなかでも5本の指に入る、いや、ベスト3に入る作品である。○○○の「○の《ぴー←(伏せ字)》」なんかとは大違い、天と地の差、月とスッポン、である。二人の人間としての違いが現れていて何か考えさせられるものがあるのだ。内容は詳しく書くと面白味が半減するので書くことを控えるが、自信をもって人に進められる本であること間違い無しである。

堺屋さんの本はそれはそれの楽しさがあるので、また紹介できたら、と思う。

○○○の「○の○○○」には飽き飽きした筆者

DATA:鬼と人と、PHP文庫、上下巻各540円、堺屋太一著
(初出:「戦国メディア市・第4回」1997.3.23)