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第15回・犬畜生といわれても絶対に勝て、勝てるは大河のみぞ

「総集編」見てから書いたので更新がまた夜になりました。すみません。というわけで、1998年より戦国メディア市の更新は第1・3土曜日となります。それにしても、37度の中途半端な風邪ひいちゃってて苦しいです。どうせなら高熱出した方がすっきりするのに・・・・ってそれはそれで苦しいので言わないでおこう。

思い起こせば第2回戦国メディア市。よくもあそこまで大人げなく書いたなあ。「原作破り」というのはある程度はいいと思う。むしろその方がよい場合だって多い。しかし、原作となまじ折衷させたことでよくない結果をもたらす事だってある。美伊の嫁入りのときも閨を共にさせない(元就頃の年齢では事までに及ばなくとも、それは問題になるのでありえないような気はするけども)なら、寸部も帯びていない「床入りの儀式」はなくした方がすっきりしたと思う。小三太と藤野延命も大河作中では仕方ない、自然な事だと思うが少なくとも「忍び」なのであれば「恩」や「美伊様に命助けられましたこと・・・」というのは、と思う。

私のまわりの“濃い”人が「大河いつ終わるんだよ、見ていて苦痛なんだよ」とまで行っていたが、前作秀吉に懲りた私は一目、一息置くことでドラマとして楽しんでしまった。とくに、有田の戦い(元就初陣)吉田郡山城篭城戦や厳島の戦いの軍議とか、吉川元春の嫁取りとかは個人的に好きなシーンだ。今回、キャスティングはばっちりで、特に井上元兼は最高(と言ってた人がいて同感した覚えがある)とか、杉その他の女性陣も前作の某有名悲運の姫君(2回の落城の方)とは違い、ばっちりであった。毛利元就と小早川隆景については異論も多かったようだが、私は当初から(とくに小早川隆景の方は)素晴らしいと思っていた。隆景の謀略の人のイメージは織豊偏重の歴史観からの目であると思う。

それではこの段落では合戦の演出についてまた。当初「今までの馬を用いた合戦から弓・槍偏重の合戦へ」と合戦シーンの演出変更を聞いて期待していたのだが、これだけはちょっと私一人の期待は外れてしまった。皆様の鎧兜の豪華なこと。雑兵のあれだけの兜を陣笠にすべて変えれば中国地方の大名はすべてその余った資金で天下取りへ一歩近づいたのではないだろうか。あと、毛利元就と尼子晴久、陶晴賢と毛利隆元の一騎打ちも武田信玄と上杉謙信の一騎打ちより斬新すぎて私の理解をはるかに超えてしまった。

毛利隆元暗殺にも驚いたし、尼子晴久暗殺にも驚いた。「有り得ること」であることに間違いない。しかし、「教科書」のシナリオをドラマ化した大河で「裏の歴史」が描かれるとは、と思って驚いた。隆元暗殺説は強烈で、こうなったら「将星録」で隆元の寿命を7にして天下取らせるしかない、と思ったほどだ(なんのこっちゃ)。こうなったら、もう行くとこまで行くしかないかも(意味深)。

私が毛利元就を考えるうちで好きなのが雪合戦のエピソード(自分のこと家中の若者の二つある)や原作で痛く感動した「陰険な目」が削られたことは『山霧』を取り上げたときに書いた。では、その代わりに何がこの大河にあったのか。加芽という架空人物と新武将・村上虎吉、野田次郎がその主たるものだと思う。私の記憶のどこかに「大河視聴率低迷を乗り切るには、中村橋之助と葉月里緒菜の不倫しかない・・・」そんなことなら最初から毛利元就を木村拓哉にして美伊を松たか子にすればよかったんだっ!(某氏談) 厳島合戦時に村上武吉の代わりに村上虎吉が出てたのは?であるが、この仮想人物登場は悪くないと思う。しかし、史実を曲げて、というのはどうかなあ、と。

毛利輝元を森田剛にしても、某特別命令リサーチ番組に視聴率で負ける。第2回では視聴率狙いは云々かんぬんと書いたが、あえて今回は逆の道を書く。こうなったら、もう視聴率を狙いまくる。その為には、尼子経久が毛利元就に非公式にそこらで3回も会ったことは大歓迎だ。「秀吉」では比叡山焼き討ちの後尾張の実家に戻るのはおかしい、と思ったが、これは小説等から見た考え方だ。テレビドラマでないと異次元を超えたような夢の会話は実現しにくい。「ドラマ」として素晴らしいものにするための結果だろう。しかし、話のストーリーに関係しないような合戦シーンとかは満足行くようにしてもらいたい。

戦国時代のエピソードは江戸時代にそこらの講談師とかその当たりで作られた、という考えもある。しかし、100年以上も民衆に親しまれてきただけあって洗練されているし、限りなく当時の考え方の近い。そのような「作られた」エピソード、「本当の」エピソードは感動に満ちたものが多い。秀吉を語る際にはたとえ矢作川に橋が架かってなくとも、舟でもいい、蜂須賀小六と流浪中に会っておいて欲しい。やっぱり秀吉には草履を暖めていて欲しい。厳島で勝った瞬間よりも、月山富田城を落とした時よりも、ささやかなある時の出来事の方が感動に満ち溢れている事だってある。ささやかな出来事の方が多いのだから。「作った」エピソードもこの際入れてもいい。これを加えることによってささやかな感動と多くの人が分かりやすい大きな感動を結び付けられるなら。大河ドラマはCGと音楽(あとキャストも)に関しては200点なのだから、これに「歴史」が面白さがくわわれば・・・

なんたって大河は影響力がある。これによってよく言われる「年号暗記の歴史」で嫌いになった人や、歴史に興味がない人にも、歴史も見方を変えればこんなに面白いんだ、ということを少しでも分かって欲しいから。そのためには「合戦は勝たねばならないがどんな卑怯な手を使ってもいいという訳でなく、卑怯な手で領土をえれば後々まで嘲られるであろう」(北条氏綱)ではなく、「犬畜生といわれても勝て」(朝倉宗滴)でもいい。どんなに素晴らしい作品でも、全国放送ならとやかく言われない作品の方がはるかにおかしい。とやかく言われるということは素晴らしい点があるからこそ、少しでも劣る点が指摘されるのであって、作品自体がすべてだめなら誰も熱狂的には言うまい。このような戦国ドラマはなんだかんだいって「大河」にしか出来ない。だから是非やって欲しいという願望なのだ。

というわけで、第15回戦国メディア市は「大河ドラマ・毛利元就」でした。



気づいたらもうすぐ12月29日更新の筆者


DATA:NHK、大河ドラマ・毛利元就
(初出:「戦国メディア市・第15回」1997.12.28)


第14回・帰ってきたシンプル戦国SLG

「大河ドラマ・毛利元就」最終回・・・・話は次回にとっておくこととしよう。というわけで、戦国メディア市第15回は「大河ドラマ・毛利元就」の予定です。とまずは予告から。これを見ていてあるものをやっていたらこの更新をすっかり忘れていた、と言う訳です。あーあ、あしたから実は中部地方の名城をいくつか仲間内で廻る予定で、東京駅7時集合、家を5時10分に出なきゃいけないのに・・・後5時間半か・・・ああ。

そのある物はこれ、であります。「信長の野望・リターンズ」

いままではテープ版とかと言われていたこの「初代・信長の野望」 かの「全国版」よりもはるか前、1983年(・・・・だったと思う、違ったらスミマセン)に出された不朽の名作。イヤーーなんだかんだ言ってはまってしまって・・・ぐすんぐすん。思い馳せれば、これをテープでロードして遊んでいた時代があったなんて・・・もっとも、この頃筆者は戦国時代のせの字もパソコンのぱの字も知らなかった、というくらいの年齢である。もしかして、すっごく幸せだったのかな? それにまだその頃光栄は「ベストオブロリータ」とか「団地妻の誘惑」とかを出して・・・(以下自粛)

なぜ実はWindows95が出る前に出ていたこの「リターンズ」を今更やっているかと? 話しはコンビニエンスストアに始まる。花王が販売している「コンビニで買えるパソコンソフト」はご存知? 1980円とかそれ以下で買えるリーズナブル且つ便利なもので、書籍のところとかにラックが架けられているものだが、そこで見つけてしまいました、「信長の野望・リターンズ」1980円、しかも完全収録版(期間限定版だと言うが) これを見て欲しい、と思ったので数日後、コンビニではなくパソコンショップで購入。そのおかげで少しばかり安かった。で関係ないんですけど、なぜか「発売元」が「エーベルージュ」等で(グサッ・・・となぜ私はここでダメージを受けなくてはいけないのかは秘密、絶対に、だ!)おなじみの富士通パレックスだったのが気になるが・・・まあいいや。

で、帰ってきてからインストール。ところで・・・この「リターンズ」は実は体験版で思いっきりこけていた。すぐ攻め込められて兜の絵に「敦盛」が出てきてズィエンド、だった。ので心配ではあったが、始めてみる。意外にいく。直、ちょっとした「コツ」分かったからであった。後、突如1571年頃になると勝手に領土が増えるので何事か、と思ったら、百地が寿命で死ぬからだった、というのにはびっくりした。もう、メッセージくらい出してくれればいいのにぃ。

まあ、体験版でどうにもこうにもならなくてこのいいゲームを諦めてしまわれた方へ・・・・「金、米を住民に与える」をやると格段に米が取れるようになります。後、夏には全財産を「町を作る」につぎ込むのも手です。場合によっては全額秋には手元に戻ってきたうえ、投資した分は来年以降もやってくる訳です。

で、まあちと甘口を控えて言わせていただければ、あの能力決めルーレットがウザイ。まああのルーレットが楽しい、一晩費やすのが楽しい、というのも分かるんだが、いい能力・・・私にとっては全部70以上がなかなか出てこない。例えば、隣国の徳川なんかはほとんどの能力が110あるんだから・・それでもプレーヤー有利は変わらないけど・・・でもねえ。いい能力が出ないと「俺はスロットマシーンで遊んでいる訳じゃなイッ!!喝ぁぁぁぁぁぁつっ!」と思ってしまう。後、せっかくここまでシンプルなんだから片手間に遊びたいのにいちいちCD-ROMを入れなくてはならないのもどうかと。それに、256色でないと起動しないのも・・・まあ、この二つは光栄ゲームの特徴だからしょうがないか(なお、将星録なんかでは256色以外でも動く)

やっぱり、シンプルなゲームは面白いですね。これが信長以外でも出来たら・・と思うと「全国版」ってすごい面白そうだなあ。是非「エクセレントコレクション」か「リターンズ」で出して欲しいっ!! 手軽なシンプル、且つ安価なゲームがたくさん出てくるといいですな、うふふふふふ。



プロジェクト参加者の筆者


DATA:光栄、信長の野望リターンズ
(初出:「戦国メディア市・第14回」1997.12.14)


第13回・霧隠れする前に

NHK大河ドラマはもうすぐ終わり・・・というわけで、今回はその原作となった「山霧」を取り上げることとしよう。毛利隆元も暗殺されたことだし・・・

この「山霧」を読んだのはNHK大河ドラマ原作に決まってからである。でも新鮮だった。永井路子さんの作品は「王者の妻」に続いてであったが、歴史小説を書いておられる女性作家の中では(私の知る限りだが)この人の作品が一番面白いと思う。今生きておられる方の中でも、一番読みやすく面白い小説を書くのはこの人ではないか、とひそかに思っている。やっぱり、女性のことは女性が描いた方がそれらしさがある。司馬遼太郎(そう言えばまだ戦国メディア市未登場だな・・・)が山内一豊の妻・千代を描いた「功名が辻」は山内一豊を書いた小説とも感じられるのだが、ひたすら美伊のことだけを書き続けているのが、この山霧だ。それでもこの作品は、他の作品に比べて毛利元就の描写が多いのではあるが。

ほんの最初に以下のような文がある。


「これは乱世の梟雄、毛利元就の作品ではない。中国山脈の山裾の霧の中を這いずりまわりつつ、十六世紀を生きた若い男と女の話である。

さすがだな、という感じである。政略結婚にしては夫婦仲が良かった元就夫妻をうまく描ききっている。かの有名な雪合戦のエピソードなんかはすごく自然だ。しかし、この本で一番「はっ」と思わせたのは上巻の一節、美伊こと「おかた」(大河ではずっと美伊で通しているが、この作品のなかではずっと「おかた」である。このことについては後述)が元就の「見てはならない顔」を見てしまう。高橋家を見事に自家の一部にすることが出来た元就は、珍しく一人で脇息にもたれかかっていた。その時の元就の眼差しは人を地獄にひきずりこまずにはおかないような暗さを湛えていたのであった。たとえ夫婦であろうと見てはならない部分があり、見てしまったとしても口に出してはならない部分がある、そのわきまえを知ることが戦国の夫婦なのかもしてない・・・以上は要約引用である。これこそが、この「山霧」でのメーン部分と、私は考えた。これこそが「毛利元就」の本性である、とみた。「律義な人柄」と「梟雄」が並立する男の一面がここまで旨く書かれたのを見たのはこれが初めてであった。

で、大河ですがね。作中では美伊自身が「おかた」と呼ぶことを元就に強要しているのだが・・・上記の「雪合戦」も「眼差し」も出てこない。代わりに出てきたのは「加芽」なる架空人物・・・・「それほどのことは御座りませぬ」は出てきたが「天と地がひっくり返ることも御座りませぬ」は出てこなかった・・・・ オープニングでは『「山霧」より』となっていて、原作とは書かれていない。それなら一理あることだと思う。元就のぼやきはこの「山霧」から出ていることは事実であろう。ただ、この大河を小説化されたものがこの「山霧」と思われることは迷惑だと思う。そっちの方はちゃんと脚本家の内館氏がちゃんと書いておられるようなのでそっちを見て下さい、という感じだ。大河に霧隠れさせるにはあまりに、惜しい。



そろそろ戦国メディア市第2回の再現なるか?な筆者


DATA:文春文庫、山霧
(初出:「戦国メディア市・第13回」1997.11.23)