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第4回・面白いものは面白い

前回、次回は「将星録」と書いた覚えがあるが無視。張り切って今回の戦国メディア市いってみよー。

堺屋太一氏といえば「大河ドラマ・秀吉」の原作で知られているが、わたしは、「鬼と人と」を薦めたいと思う。

「鬼と人と」は「豊臣秀長~ある補佐役の生涯~」「秀吉」とともに大河ドラマの原作になった作品である。しかし、堺屋さんの名前は「過激演出」かつ「史実誇張」の悪名高き96年度大河ドラマで泥を塗られた。某週刊誌にも載っていたように、作者本人もびっくり、だったのである。

私がこれを読んだのは大河ドラマが始まるまえで、「豊臣秀長」のあとであった。ぶっ飛んだ。くそがつくほど面白い。堺屋さんといえば、もともとは経済、通商産業方面の人で、歴史を現在の日本のために役立てようとしている感がある。「豊臣秀長」やその後に読んだ「巨いなる企て」でも、現在の会社組織に例えられる文章が出てきて、わかりやすい。好みの別れる文章かもしれないが私は好きである。

しかし、「鬼と人と」は違う。まず文書形態から行って違う。独白形式なのである。作者は織田信長を書きたかった。しかし、「日本史の奇観」「日本史の例外ともいうべき事件の一方の主役」「主観性の強い天才」である信長は、筆者の手によって書くことは憧れではあった。しかし、それを実行するために長い間迷い続けた、ということが序文に書かれている。もっともなことだと思う。それでたどり着いたのが、時代の改革者である信長と、時代に忠実な明智光秀、それぞれの口を借りた“独白形式”だったのである。

光秀が織田家に仕えて数年も経ったある年、光秀は信長と生活をそれなりの期間ともにせねばならなくなった。天正10年の武田攻めのことである。同じ出来事を二人それぞれの立場で書いていて面白いのだ。筆者はエンターテイメント性を重視して書いたつもりはないのかもしれないが、小説としてのエンターテイメント性は極めて高いものがある。私は今まで50作品弱歴史小説を読んでいるが、そのなかでも5本の指に入る、いや、ベスト3に入る作品である。○○○の「○の《ぴー←(伏せ字)》」なんかとは大違い、天と地の差、月とスッポン、である。二人の人間としての違いが現れていて何か考えさせられるものがあるのだ。内容は詳しく書くと面白味が半減するので書くことを控えるが、自信をもって人に進められる本であること間違い無しである。

堺屋さんの本はそれはそれの楽しさがあるので、また紹介できたら、と思う。

○○○の「○の○○○」には飽き飽きした筆者

DATA:鬼と人と、PHP文庫、上下巻各540円、堺屋太一著
(初出:「戦国メディア市・第4回」1997.3.23)


第3回・これぞ戦国気分?

もうすぐ最新版の将星録が出る都合上、早く書かねば。とほほ。

そう、今回は信長の野望・天翔記なのだ! このゲーム、発売された当時で一番売れたパソコンゲーム。戦国時代物が一番売れるとは何か? 何がそんなに面白いのか?

このゲームは実際の戦国時代にはありえないことがいくつか含まれている。姫武将、異常なまでの鉄鋼船の強さ、など、ゲームゲームしているところがある、そこがゲームとしての面白さを引き出しているのだよ。その面白さが新たなる戦国時代好きを生み出してくれているのだ。事実、私のまわりにもこのゲームがきっかけで里見オタクになった奴とか、真田家(昌幸、幸村とかの)を“しんだけ”とか発音しときながらゲームは滅法強い奴とかいるし。

このゲームから採用された「軍団制」は私を納得させた。私自身は前作覇王伝からのユーザーなのだが、例えば織田家でプレーする。そのとき、近畿一帯を制圧した。そのあと、わたしは絶対に羽柴秀吉を北陸に遣ったり、加藤清正を柴田勝家のもとで働かせるようなこともしない。羽柴秀吉は中国戦線で働かせ、加藤清正らの子飼いの武将はその下で働かせる。そう、史実通りにやらないと気が済まない。戦国野郎の性なのかしらね、これは。その意味で、より史実に近づいたのがよかった。

光栄から出されている関連書籍がまたいい。私は「信長の野望・覇王伝辞典」と本屋でであって、戦国時代が好きになり、ついでにパソコンの知識も得て、うちにあったPC-9801UVでこのゲームをかって、はまって、今のペンティアムパソコンを買う、という経緯。すくないだろうけど、戦国時代好きにパソコンを普及させているのではないか。やはりパソコン普及にはワープロ、表計算、そしてゲームが欠かせない。

しかし、複雑すぎて初心者がなかなか入ってこない、という「全国版」「テープ版」からの熟練ゲーマーのいい草。少なくとも私のまわりではそんなことないんだけど。しかし、これはあたっているようである。私は、戦国ゲームは「天下統一Ⅱ」(システムソフト、しかも体験版。今はWindows95版がある)からだったんですんなりと入ったのかもしれないし。私自身、世に名高い名作の「武将風雲録」とかやってみたいんだけど。TAKERUおわちゃったし、中古なんかでも売ってないし。とほほ。

でも、次の将星録はほんとによさげ。今から期待してますです。これで初心者も入ってこれるでしょう。とゆうわけで、第4回は「将星録」を紹介します。嗚呼、小説を紹介できない。

最近またはまった筆者

DATA:信長の野望・天翔記、95年光栄

(初出:「戦国メディア市・第3回」1997.3.16)


第2回・やっぱり視聴率ねらいだったのね?

96年度大河ドラマも大好評のうちに終わった。竹中直人さんや、渡哲也さん演じる織田信長の好演技が光り、日本人に人気の高い秀吉を見事なまでに映像化した。

が、しかし・・・・

一部の濃い人・・・・戦国野郎とか・・・・そういう人には不満がたくさん残った。その不満なところを今更ながらあげてみたい。
1.史実と完全に違うところがある。
ここで言いたいのは、本能寺の変徳川家康黒幕説や明智光秀の妻に、光秀の首が渡り、それで入水、といったことではない。思いつくだけあげてみよう。一つ、武田信玄が約4ヶ月早く死ぬ。秀吉が信長に信玄の死が間違いないと告げに言って自宅に帰ると、おね(ねね)が正月の準備をしている。よく考えてみよう。信玄の死は1573年4月12日である。もし、岐阜にまで年内に死んだことが伝わるのであれば信玄は、三方が原で戦死したことになる。それも、おおっぴらに信玄の遺品を石川五右衛門がごときの身分の低いものに与えていたのならば、信長の乱破がすぐさま情報をつかんだだろう。後次々に連ねていくと、正徳寺の会見のときなぜか10歳の竹中半兵衛が出ている、とか、明智光秀の母処刑のときになぜか秀吉が丹波に来ている、細かいものをあげていくときりがない。私は、別に史実でうまく分かっていない点や隠された点を思い切った説でやるというのは許されると思うんですが、史実を捻じ曲げてまでドラマのテーマを貫くというのには承知しかねる、といいたいわけですよ。分かってください。
2.秀吉が英雄すぎ
いくら秀吉が主人公だからって、悪逆非道?の信長に、比叡山攻めをやるな、とか、はくだみの盃をいけない、とか、明智光秀母見殺しについて「鬼!」といって刀振り回したら、秀吉はこんなに出世しなかったでしょう。妹を徳川家康に嫁がせたり、朝鮮出兵などを家臣のやったこととするのもちょっと。秀吉だって悪事を少しくらいしないと天下取れなかったわけだし、人間として晩年には耄碌したんだから、あまり神格化しすぎ。
3.キャストにびっくり。
これはどうでもいいことです、今となっては。皆さん迫真の演技だったんだから。織田信長とか竹中半兵衛とかがあまりにも老けていてどきりとしたけど。でも、アドリブで主君に向かって刀振るのはやめてください、秀吉役の方。
しかし、捨てたものがあるんだから、拾ったものもある。「家族」を中心に描いたことで、歴史マニア以外の人に大変受けがよかった。だいたいNHKは一回「太閤記」をやっているんだから、思いきったことも必要だったのでしょう。総括して、「いい時代劇」でなく、「いいドラマ」だったんじゃないかと。

新しい大河ドラマの「毛利元就」は、いい時代劇かついいドラマではないかと。何しろ資料の少ない時代だから、自由がきくわけです。最初、時代劇は初めて、という脚本家だときいて、心配しましたが、今のところ全然平気です。

ところで、大河ドラマには、公式ホームページがあり、各週のあらすじが分かるお得なページです。アドレスは、これだけぼろくそ書いてしまったのでかけないんですが、NHKホームページのどこかにあるとだけ書いておきます。

これだけ書いた以上、責任はとるつもりです。どんなメールが来ることも覚悟の上です。じゃ、自分でやったらどうなのか、と言われても、困りますけど、そこが何かを評論するときの難しいところです。

ビビっている筆者

DATA:NHK、大河ドラマ「秀吉」

(初出:「戦国メディア市・第2回」1997.2.3)