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第13回・霧隠れする前に

NHK大河ドラマはもうすぐ終わり・・・というわけで、今回はその原作となった「山霧」を取り上げることとしよう。毛利隆元も暗殺されたことだし・・・

この「山霧」を読んだのはNHK大河ドラマ原作に決まってからである。でも新鮮だった。永井路子さんの作品は「王者の妻」に続いてであったが、歴史小説を書いておられる女性作家の中では(私の知る限りだが)この人の作品が一番面白いと思う。今生きておられる方の中でも、一番読みやすく面白い小説を書くのはこの人ではないか、とひそかに思っている。やっぱり、女性のことは女性が描いた方がそれらしさがある。司馬遼太郎(そう言えばまだ戦国メディア市未登場だな・・・)が山内一豊の妻・千代を描いた「功名が辻」は山内一豊を書いた小説とも感じられるのだが、ひたすら美伊のことだけを書き続けているのが、この山霧だ。それでもこの作品は、他の作品に比べて毛利元就の描写が多いのではあるが。

ほんの最初に以下のような文がある。


「これは乱世の梟雄、毛利元就の作品ではない。中国山脈の山裾の霧の中を這いずりまわりつつ、十六世紀を生きた若い男と女の話である。

さすがだな、という感じである。政略結婚にしては夫婦仲が良かった元就夫妻をうまく描ききっている。かの有名な雪合戦のエピソードなんかはすごく自然だ。しかし、この本で一番「はっ」と思わせたのは上巻の一節、美伊こと「おかた」(大河ではずっと美伊で通しているが、この作品のなかではずっと「おかた」である。このことについては後述)が元就の「見てはならない顔」を見てしまう。高橋家を見事に自家の一部にすることが出来た元就は、珍しく一人で脇息にもたれかかっていた。その時の元就の眼差しは人を地獄にひきずりこまずにはおかないような暗さを湛えていたのであった。たとえ夫婦であろうと見てはならない部分があり、見てしまったとしても口に出してはならない部分がある、そのわきまえを知ることが戦国の夫婦なのかもしてない・・・以上は要約引用である。これこそが、この「山霧」でのメーン部分と、私は考えた。これこそが「毛利元就」の本性である、とみた。「律義な人柄」と「梟雄」が並立する男の一面がここまで旨く書かれたのを見たのはこれが初めてであった。

で、大河ですがね。作中では美伊自身が「おかた」と呼ぶことを元就に強要しているのだが・・・上記の「雪合戦」も「眼差し」も出てこない。代わりに出てきたのは「加芽」なる架空人物・・・・「それほどのことは御座りませぬ」は出てきたが「天と地がひっくり返ることも御座りませぬ」は出てこなかった・・・・ オープニングでは『「山霧」より』となっていて、原作とは書かれていない。それなら一理あることだと思う。元就のぼやきはこの「山霧」から出ていることは事実であろう。ただ、この大河を小説化されたものがこの「山霧」と思われることは迷惑だと思う。そっちの方はちゃんと脚本家の内館氏がちゃんと書いておられるようなのでそっちを見て下さい、という感じだ。大河に霧隠れさせるにはあまりに、惜しい。



そろそろ戦国メディア市第2回の再現なるか?な筆者


DATA:文春文庫、山霧
(初出:「戦国メディア市・第13回」1997.11.23)


第12回・まずは絵と写真から

今回こそ「資料」を取り上げてしまうのである。第12回の今回は「歴史群像・名城シリーズ」の登場だ。

なんか、つい数年前、綺羅星の如く突如現れたこの名城シリーズ。ま、私が持っているのは大坂城と姫路城なのだが、この名城シリーズのすごい点はどこか?

それは、ズバリ、綿密な復元図だ。歴史群像シリーズにあるそれよりもかなり細かく、見ているだけでも楽しい。それに尽きると思う。今は無き建物に思いを馳せる――楽しい事ではないか。もちろんそれに付随する城の写真も健在だ。これらの資料は城の~~式縄張りとか気にしなくてもいいからすっごく楽しいんですよね。私も「完全城郭手引」とか書いていますけど、実はあんなの嫌いです。まあ、あれを書いたのは私の都合ですが・・・って自分を縄で縛ってしまったところで次の話題へ行く。

ま、文章も長々と書いてはありますが、これもまた興味深い事であります。城の建設(作事と普請)に関わった人々のエピソードや城主の思いなんかのところは特にいいです。こーゆーのが少し間違っているのを探しつづけて「ここが違う」と言い続けているときりがないよ、S君>千葉県某市。と私的なメッセージを入れたところで話しを続けよう。こういう資料っていろいろと間違いもありますがね、なんかそろそろ「またか」と思うレベルになってきちゃうんですよね、気にしないで読まないと「それじゃ読むな」って事にもなりかねないし。

と、なんか脈略無く書いてしまいましたけど、全国の城がいろいろと揃っているのもまたいいところ。「日本城郭体系」全巻揃えるよりは現実的だろう、ってあたり前か。

学研はこのようなビジュアル的に見ていい資料が揃っているのがいいですね。文章はともかくとして。いろいろと役に立つんですよ、結局は。

 

某誌を見て私の素姓に怒られた方へひたすら詫びる筆者

DATA:学習研究社、「歴史群像」名城シリーズ
(初出:「戦国メディア市・第12回」1997.11.9)


第11回・偉大すぎる前作をもった2作目

本当はこの戦国メディア市で初めて、資料(注:史料ではない)を紹介しようと思っていたが、ある、実に下らん理由で取り止め。あーあ、なんでこんなに制約がついてしまうんだろうか?

今回はまたもやゲームを取り上げる。「天下統一II」 最近、やっと?Windows95番が出て、ちょっとだけ再ブレイクしたが、私がやったのはPC-98版の「パワーアップセット」の方なので、悪しからず。

このゲームに初めて出会ったのは、もう6年くらい前だろうか。ある雑誌についてきた体験版をプレーして、「これは面白い」と思った。その体験版は100万石で終わりなのだが(つまり戦国大名レベルまで)、苦労の末、1日中やりつづけて、北条家で100万石に到達したのであった。その後、攻略本にて、予備知識を更に深め、結局製品版を買い、「ふぅー」と思いつつやりました。これが、「信長の野望・覇王伝」につながっていったわけです。

これがいいとこ、といったら、当時の信長の野望に比べて、グラフィックが、すっきりとしていた。だから、最初は信長の野望はクセがある、という先入観でいっぱいになってしまいました。あと、国によって兵の強さが違ったり、鉄砲の普及していく様、そのあたりが異様にマニアックで、おお、と思いましたね。何よりも、シンプルな合戦システム。このゲームの後覇王伝をやると覇王伝の方が面白い、と思ったが、今から考えるとこっちの方が絶対面白い。野戦なんかもコマンド少ないし、攻城戦も基本方針だけで進むから展開が早い。例えば、「この国を統一しよう」などという遊び方がよりしやすいゲームなのである。

なんてったって、最初に遊んだ戦国ゲーム。思い出深い。この天下統一シリーズは、第1作があまりにいい、というのが世間での評判だが、このIIもいいのに、この第1作の影に隠れてしまった、としか言いようがない。もっとも、第1作をプレーしていないので深い事は言えんが。

私は、こんなダイナミックでシンプル、かつ熱中できる戦国ゲーム再び現れないかなーと一人思い、そして笑っているのである。

プロジェクト参加者の筆者

DATA:システムソフト、天下統一II
(初出:「戦国メディア市・第11回」1997.10.26)