胆江新市名 「奥州市」に::岩手日報
私の親友であるtakaの出身地である江刺市が、市町村合併で「奥州市」となることが決まった。江刺市といえば「炎立つ」以来、「えさし藤原の郷」の壮大なロケセットと多く残る大自然をバックに、戦国モノを中心として、直接江刺とのゆかりがない大河ドラマのロケ地も務めてきた自治体である。今回の「義経」でもメーンロケ地として毎週大河ドラマのオープニングテロップで名前が堂々と表示されている。私は以前より「江刺」という地名に、岩手らしさを感じていた。
まだ慣れもないので、賛否の「否」があるのは当然だと思える。ただ、ひとつの新しい市が生まれるときは、とりあえずは祝福したい気持ちである。なによりも、決まった市名を旗印に一致団結していくのだという言葉が、奥州市の市役所が置かれることであろう水沢市の現市長から聞けたことは何よりも頼もしく感じる。水沢も旧城下町といってよい土地であろう。またひとつ、中心部を関した市の名前が消えるわけだ(別にそういった流れに反対しているわけではない)。
ただ、最初の候補10個のうちtakaが「日高見市」というのが違和感がない、小さいときから親しみがある、これが良かったというのを聞く機会があり、これは私にとって有益な話だった。「日高見(ひたかみ)」は北上に訛る以前のこの地方の呼び名で、肥沃な土地と屈強な兵士を持ち大和朝廷にも屈しなかった旨が、日本書紀にも記されているのだという。もっとも、宮城平野から下北の当たりまで広くさすようではあるが、「奥州」よりはやや狭いか。宮城のほうから物言いがあるかもしれないが、それは東北地方全般からの物言いが予想されうる奥州市とて同じである。
雄大な自然を擁しながらどうも安比高原に知名度で劣る、西根町・安代町・松尾村の新市名「八幡平市」の例でもないが、市町村名にして知名度を挙げるというのも一つの市名の決定法だろう。平泉文化も良いのだが、アテルイ、坂上田村麻呂以前ももっと売り出していけるよなあと「日高見市」にはおもうのだ。北海道ひだか市のときも候補にあがっていたみたいで、日高山脈も「日高見」の流れを汲むのだろうか。
だいたい、日本書紀の記述なのに、「蝦夷」のように変な漢字があてられてないというのは気になる。東北地方に残るアイヌ語起源らしき地名には、謎ときが楽しめそうな要素があり、まだ調べつくされていないこともあり興味が非常にそそられる。
まあ、市町村合併のほうはこんなこともあって、まだ紆余曲折がありそうだ。